筑豊一代炭坑王伊藤傳右衛門
著者:宮田昭
出版社:書肆侃侃房 地方・小出版流通センター
価格:1,800円
発売日:2008年02月
判型:B6/ページ数:368
ISBN:9784902108712
本書は、埋もれていた炭坑資料を丹念に紐解き、筑豊炭坑の盛衰を傳右衛門の生涯に絡めて描いた、いわば歴史物語である。
坑夫、船頭上がりから人もうらやむ大富豪の炭坑王にのし上がった傑物伊藤傳右衛門。華族令嬢柳原Y子(歌人名白蓮)との再婚によって、その頂点まで上りつめたかに見えたが、宮崎龍介という男の出現でその結婚生活は10年後には破綻する。白蓮の出奔は新聞紙上に絶縁状をたたきつけるというセンセーショナルな仕掛けで、当時の社会を大いに賑わした。そのかげで傳右衛門の社会的な偉業は意外と知られていない。同時代を生きた炭坑の男たちの姿が行間を飛び交い、大正ロマンの華やかな時代から軍需景気を経て、太平洋戦争の終結で石炭産業は破滅する。頂点を極め、一時代を駆け抜けた男の生き様は、読者を惹きつけてやまないだろう。