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- 不妊治療の時代の中東
-
家族をつくる,家族を生きる
アジ研選書 No.49
- 価格
- 3,410円(本体3,100円+税)
- 発行年月
- 2018年03月
- 判型
- A5
- ISBN
- 9784258290499
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[BOOKデータベースより]
2016年度と2017年度の2年間にわたってアジア経済研究所で実施された研究会「中東イスラーム諸国における生殖医療と家族」の最終報告書。
序章 不妊治療の時代の中東を生きる
[日販商品データベースより]第1章 不妊治療と宗教―イスラームを中心に
第2章 男性役割から不妊と家族を考える―上エジプト出身者との出会いから
第3章 女性からみたカイロの生殖の一風景―家族をめぐる二つの期待の狭間で
第4章 トルコで不妊を生きる―キャリア女性が夢みる理想の家族
第5章 イランにおける遺伝性疾患と家族―結婚とリプロダクションの選択に焦点を当てて
終章 家族をつくる、家族を生きる
世界初の体外受精児がイギリスで誕生したのは1978年のことである。情報や医療技術のグローバル化が進むなか、この出来事は日本などと同様に、中東地域の人々にとっても新しい時代の幕開けを意味した。エジプトでは、1986年に国内初の体外受精専門クリニックが開設され、翌年には最初の体外受精児の誕生が話題になった。その後、顕微授精の技術が実用化したのは 1990年代前半のことである。それから 20年余り、生殖補助技術を用いた不妊治療は、中東においても標準化された医療の一部として普及してきた。2012年にエジプトで公開された映画『パパ』(B?b?)は、そうした不妊治療の時代に生きる人々を描いたフィクション・コメディーである。主人公は不妊専門医のハーゼム。ある日、彼のもとに、数カ月前に結婚したばかりの友人が訪ねてきてこう言った。「今すぐ顕微授精をたのむ」。驚いたハーゼムが理由を尋ねると、友人は答えた。「結婚式の翌日から、親戚が『赤ん坊はまだか』と聞いてくるんだよ。こんなのは早く済ませてしまいたい」。「いきなり顕微授精だなんてせっかちなやつだ」と笑っていたハーゼムだったが、やがて彼自身も思いがけない状況に追い込まれる。毎日が忙しく、疲れ切って帰宅し、ソファーで眠ってしまうハーゼムに、新婚の妻が「私も顕微授精をしてほしい」と願い出てきたのだ。医師として何人もの体外受精児を世に送り出してきたハーゼムであったが、妻の言葉に衝撃を受け、「子どもは自然な形で生んだ方がいいに決まっている」と叫ぶ。
不妊が治療可能となった時代、子をもつ手段の選択肢が増えるなかで、家族をめぐる状況はどのように変化したのだろうか。本書では中東を舞台に、この問いを考えていく。