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[BOOKデータベースより]
吉行淳之介(一九二四‐九四)は、新宿赤線地帯の娼婦を題材にした作品群で登場し、一九七〇年代以降一世を風靡するごとく注目された作家である。現代の侍にたとえられ、ストイックな芸術家、女好きの女嫌いなどと評され、その文学は人工的な冷やかさを持ち、虚無と抽象性、研ぎ澄まされた感覚にみちている、と評された。だが、その作品の魅力の全体像を探りながら論じたものはこれまでにない。本書は主要な作品の生成をたどりながら、あらたなる吉行文学の本質―「現実から非現実への飛翔」「心理ではなく生理のメカニズムの抽象化」「繰り返された改稿の果てにたどりついた文体の美」等を論じた意欲作である。“女”や“性”を書いた作家ではない、という言葉の先に見える吉行の文学世界が新鮮に輝く。
第1章 伝説への序奏―「鳥獣虫魚」
[日販商品データベースより]第2章 恋愛と覚醒―『闇のなかの祝祭』
第3章 痩せ我慢とダンディズム―『焔の中』
第4章 文章の高みへ―『驟雨』における改稿から
第5章 具象から抽象へ―『砂の上の植物群』まで
第6章 荷風と淳之介―『星と月は天の穴』の頃
第7章 衰弱と薔薇―『暗室』
第8章 澄みわたる文体―最後の短篇「蝙蝠傘」へ
1970年代以降一世を風靡するごとく注目された作家、吉行淳之介。本書は主要な作品の生成をたどりながら、あらたなる吉行文学の本質を論じた意欲作。吉行の文学世界が新鮮に輝く。