2014年 4月号
神田 茜Akane Kanda
人気女性講談師であり、昨今は執筆活動にも力を入れている神田茜さん。小説を書くのは自宅近辺のカフェが多い。この店も、カフェオレと静かな環境がお気に入りの一軒だ。
出先での執筆はモバイル端末で。書いた分を家のパソコンにメールで送り、継ぎ足しながら作品を仕上げていく。午前中に家事を済ませ、昼ごろに外出するが、「テンションが上がらない場合は、カラオケボックスで声を出したり、踊りのお稽古に行って仕事の勢いをつけます」。
『ぼくの守る星』は、ディスレクシア(読み書き困難)の中学生・翔(かける)を中心に描く連作短編集。翔や家族、クラスメイトなど、誰もが生きづらさを抱える中、「誰かを愛おしく思う、誰かに必要とされる」ことのぬくもりが胸に響く。「コンプレックスやハンディキャップがあるからこそ、人の痛みがわかる。その心の豊かさが、生きていく上で一番大事なことなのでは」。それぞれの迷いの先に、確かな希望が灯る。そんな温かみに満ちた物語だ。
「講談と小説では、脳の使う部分が違うみたい」。それでも「講談を作ってきた経験が体に染みついているので、なんとなくお客様の顔を思い浮かべながら書いています。話が長すぎると飽きるかな、このあたりで息が抜けるような言葉や笑える部分があったほうがいいなと、読みやすさにもっとも気を遣いますね」。創作のヒントは、家事をしているときに思いつくことが多い。食器洗いや風呂掃除をしているときなど、「水しぶきが脳の活性化にいいみたいです」。
(日販発行:月刊「新刊展望」2014年4月号より)
今月の作品
- ぼくの守る星
- ディスレクシアのため生きづらさを抱える翔。息子のハンディキャップを受け止めきれずにいる両親。家族関係に悩みを抱えるクラスメイトの山上と中島…。生きることが愛おしくなる、成長と再生の物語。