- 憲法9条へのカタバシス
-
みすず書房
木庭顕
- 価格
- 5,060円(本体4,600円+税)
- 発行年月
- 2018年04月
- 判型
- A5
- ISBN
- 9784622086734
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[BOOKデータベースより]
精緻な9条2項論、ソクラテス・メソッドを駆使して説く憲法改正問題、近代市民社会の基底を問う圧巻の漱石・鴎外論、通説を鮮やかに覆すホッブズ論まで、ローマ法学者が見透す9条の構造。
序―日本国憲法9条の政治的弁証に向けて
[日販商品データベースより]1 日本国憲法9条2項前段に関するロマニストの小さな問題提起
2 法学再入門:秘密の扉 ぜんべえドンとオハナぼう、番外篇―ポンポコ山に憲法改正の危機
3 知性の尊厳と政治の存亡―三谷太一郎『人は時代といかに向き合うか』
4 政治はどこにあるか
5 夏目漱石『それから』が投げかけ続ける問題
6 森鴎外と「クリチック」
7 Hobbes,De civeにおけるmetus概念
8 日本国憲法9条改正の歴史的意味
憲法9条とりわけ2項をどう解釈すればいいのだろうか。今まで一度も真に理解しないまま、粗雑な議論で花芽を摘んでいいはずがない。カタバシスは「下降行」、転じて、冥府に降り、過去の人物に遭うこと、さらに転じて、時間軸を遡ることをいう。タイムトンネルをくぐり、明晰に著者は立論する。
9条は、パリ不戦条約が自衛権留保によって空洞化したという苦い歴史的経験の上に立つものであった。自衛概念の危険性は、ホッブズが遙かトゥーキュディデースの書物を最深部まで読み込み、その克服の見事なロジックを組み上げたものであった。
〈こうして、既に9条1項は、一見不戦条約をそのまま継承するものに見えて、自衛のための戦争をも否定する〉〈2項はさらに、占有線を越えない実力形成といえども内部をトータルに軍事化して他国の軍事化に対抗し抑止力(報復力)を得るものであればこれを禁ずる趣旨である。これが自衛権拡張の主要なヴィークルだからである〉そして〈政治システム存立にとって不可欠の原則を宣明したこれらの規定は憲法に不可欠であり、削除することは政治システムの破壊に等しいから、改正は違法である〉
精緻にしてストレートな9条論、ソクラテス・メソッド(対話)を駆使して説く憲法改正問題、近代市民社会の基底を問う圧巻の漱石論・〓外論(書き下ろし)から、自衛戦争を正当化したとされる通説を鮮やかに覆すホッブズ論まで、ローマ法を専門とする碩学がクリアに見透す9条の構造。