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[BOOKデータベースより]
名門の天才坊やとして注目された歌舞伎界のサラブレッド、勘三郎。渋い脇役の家に重い期待を背負って生まれた三津五郎。二人の名役者は、奇しくも同学年に生まれた。生前親交の深かった劇評家が描き出す、宿命の星の下に生まれた二人の物語。
勘三郎の死―勘三郎七十七歳、三津五郎五十六歳
元気でやんちゃな勘九郎ちゃん―勘九郎三歳
粋にいなせに三津五郎―八十助六歳
彗星のように―勘九郎八歳、八十助七歳
テレビの虜囚―商業演劇の誘惑―勘九郎二十四歳、八十助二十三歳
狂言を踊る―勘九郎二十八歳、八十助二十七歳
二代目松緑、その技藝の継承―八十助三十歳
十七代目の金の粉―勘九郎三十三歳
納涼歌舞伎が始まる―勘九郎三十五歳、八十助三十四歳
『春興鏡獅子』と『京鹿子娘道成寺』―勘九郎三十六歳〔ほか〕
歌舞伎界屈指のサラブレッド、名門の天才坊やとして早くから注目された勘三郎と、
渋い脇役の家に重い期待を背負って生まれた三津五郎。
相次いで世を去った二人の名役者は、奇しくも同学年に生まれた──。
勘三郎と三津五郎が並んで踊っていると「フジテレビとNHKが踊っている」と三津五郎の叔母に冷やかされたという。明るくてひょうきんな持ち味の勘三郎がフジテレビ、端正で基本に忠実な美しさを湛えた三津五郎さんがNHK、というわけだ。
生い立ちも、性格も、藝も、すべてが対照的だった二人は、しかし、他人には窺い知れない絆で固く結ばれていた。
「名人はどんなに曲がった形になっても、お尻の穴から頭の上へ、一本の棒が通ってますよ。寿さん(三津五郎)がそうで、僕もそれを心がけてる」(勘三郎)
「幼い時から切磋琢磨してお互いに競ってきました。もう二度と一緒にやれないかと思うと、人生の半分をもぎ取られたような、何とも埋めようのない喪失感に襲われています」(勘三郎が亡くなったときの三津五郎のメールより)
天真爛漫な天才が人生ではじめて抱えた鬱屈、謙虚な名人が覗かせた譲れない意地。
宿命の星の下に生まれた二人は、藝の世界で、短くも激しく火花を散らしてこの世を去った。
生前、親交の深かった劇評家が明かす不世出の役者たちの知られざる物語。
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