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何度でも読みたい
生涯に2度、同じ歴史の人、親鸞を主人公にして小説を書かれた吉川英治さん。
しかも、3度目も考えておられたことが、巻末に収められている「著者の言葉」から分かります。汲めども尽きぬ魅力が、あるからでしょう。
「敦煌」などの名作で知られる井上靖さんも魅せられた一人のようでした。
「生涯に書いてみたい人物が2人いる。一人は利休。この人はすぐ書けると思う。もう一人は親鸞聖人。利休と違って、運命的な出会いがなければ、書けないと思う」
雑誌か何かの記事で読んだものの記憶です。
これまで、多くの作家が小説の主人公に選んだのも、頷けます。
吉川英治さんは、難しい理論や人工的な脚色に頼らず、爽やかな風景描写と熱い会話で筆を進められます。
読むほどに、知るほどに、この魅力ある人物の謎はどこから来るのか。知りたくなります。
その謎解きの橋渡しともなる付録も、「解説 親鸞聖人を学ぶ」として収められています。
多くの作家の筆では今ひとつわからなかった魅力の舞台裏を、少しでも紐解こうというアプローチです。時代背景と仏教の目的がコンパクトにまとまっています。小説にも出てくる聖人の歌の解説に驚かされました。