2012年 3月号
『論語の読み方』
孔子と著者、両者の熱い思いが伝わってくる最高の人生実用書
この本は、中野孝次氏が実際に『論語』を十代から晩年の七十代まで生涯にわたって愛読し、生きる指針としてきたという事実に裏付けされています。氏の愛読書は漢籍で、その余白には歳月を感じさせるたくさんのメモが見られました。
世の中をひろく体験した孔子の実践的かつ普遍的な教えが詰まっている『論語』。
「子曰く、学んで時にこれを習う、亦説ばしからずや。朋有り遠方より来る、亦楽しからずや。人知らずして慍みず、亦君子ならずや。」(学而1)について、著者は「文章というよりこれは詩であって、声に出して唱していると、学問というより未知の奥深い世界に誘われてゆく期待感とよろこびが湧いてきて、心が躍る」と述べています。
『論語』は社会人として一度は目を通しておきたい名著ですが、「昔から伝わったままの形では、現代人にとっつきようもないな」と著者が書いているとおりでしょう。
古今東西の古典に造詣が深い著者の一貫した考え方は、「古典は今を生きている人に役に立ってこそ意味がある」でした。
「やさしい・読みやすい・役に立つ」をモットーに、『論語』の言葉をテーマにそって選び出し、原文・読み下し文・私訳・エッセイと、充実した構成で書き下ろしたのが本書です。わかりやすく含蓄に富んだ内容は、「論語初心者」から「論語好き」まで多くの方に親しんでいただけると思います。
孔子、そしてその人間性に惚れ込んだ著者。両者の熱い思いが立ち上がってくる名解説・名エッセイの『中野孝次の論語』(四六判上製)の内容はすべてそのままに、頁数も三百七十六頁のままの新書判化です。
人生論の名手としても知られた著者の『論語』をぜひ味わっていただきたいと願っています。
(日販発行:月刊「新刊展望」2012年3月号より)
今月の作品
- 論語の読み方
- 「信頼される人間」とはどんな人を言うのか。世の中をひろく体験した孔子の実践的な教訓。その教えを生涯にわたって生きる指針とした著者。両者の熱い思いが立ち上がってくる名解説、名エッセイ。最高の人生実用書。