2014年 6月号
『猫は神さまの贈り物』
猫神さまのお導きにて復刊
いつだったか昔、猫を飼っている人が「猫って人間より神さまに近いんだと思う」と力説しているところに居合わせて、「猫」と「神さま」という言葉の組み合わせがなんだか面白くて、頭に残っていた。昨年、古書店の目録で『猫は神さまの贈り物』というタイトルの絶版本を見つけた。いいタイトルじゃないの。と出版社名を見たら、自社の本だった! 発刊当時の社員はもう誰もいなくて、見本も無いので結局古書店で購入した。
『猫は神さまの贈り物』は、1982年に初版が刊行された。森茉莉や谷崎潤一郎など、きっと文学好きなら「おっ」と声を出してしまう顔ぶれの作家による、「猫」にまつわる小説やエッセイを集めたアンソロジーだ。今回の改訂・復刊にあわせて〈小説編〉〈エッセイ編〉に分冊し、新たな作品を加えさせてもらった。
本書には淡々とした筆致の作品が多い。だが、愛するものとの別れを経験したことがある人なら誰でも感じるであろう痛みに溢れている。この読後“痛”こそ、もう会えないものへの愛しさと、また、生きているものの温もりの切なさを思い起こさせてくれる。
カバー画には美術家のミヤケマイさんに作品をご提供頂いた。凛とした目が印象的な猫たち。展覧会で作品を拝見した際に、まさにその目に「猫って神さま…」の話を思い出した。だから、古書店の目録で本書のタイトルを見たときからもう、ミヤケさんの猫以外は考えられなかった。
こうして本書の復刊は、点と点が繋がるように実現した。これはもしや猫神さまのお導きであったのではなかろうか?
(日販発行:月刊「新刊展望」2014年6月号より)
今月の作品
- 猫は神さまの贈り物 小説編
- 本好きと猫好きはなぜか似ている。森茉莉、佐藤春夫、小松左京、梅崎春生、宮沢賢治、星新一ほか、個性派作家たちによる、孤高を愛する人のための珠玉の「猫」小説アンソロジー、待望の復刊。
今月の作品
- 猫は神さまの贈り物 エッセイ編
- どうしてこんなに愛しいのか。谷崎潤一郎、大佛次郎、夏目漱石、奥野信太郎、木村荘八、柳田国男ほか個性派作家たちをも翻弄する猫の魅力。読書家垂涎の執筆陣による珠玉の「猫」エッセイアンソロジー、待望の復刊。