2014年 4月号
『ぷくぷく、お肉』
豪華執筆陣による「肉」のはなし 食べてから読む? 読んでから食べる?
「お肉だいすきー」と無邪気にいえたのは、いつまでだったのだろう。健康志向の高まりとともにいつしか肉は「ワルモノ」にされ、肉食には罪悪感すら漂うように。が、しかし、そんなものは食いしん坊には通用しない。
古今の作家たちによる食にまつわる名随筆を編んだ「おいしい文藝」シリーズがスタートした。第1弾のテーマは、「お肉」。
ずらりと顔を揃えた執筆陣は、内田百閨A古川緑波、檀一雄、吉田健一、三宅艶子、阿川弘之、池波正太郎、佐藤愛子、邱永漢、吉本隆明、神吉拓郎、色川武大、向田邦子、開高健、伊丹十三、山田太一、園山俊二、赤瀬川原平、東海林さだお、内館牧子、村上春樹、四方田犬彦、阿川佐和子、久住昌之、平松洋子、井上荒野、島田雅彦、町田康、菊地成孔、馳星周、角田光代、川上未映子。
いたずら心を出して誕生順に並べてみた。最も高齢のときに書かれたのは内田百80歳による「牛カツ豚カツ豆腐」。いちばん若い書き手は川上未映子の30代。バラエティにとんだ作家がそれぞれの「肉」を語る。
牛鍋のうんちくを披露する古川緑波、味噌カツと出逢う向田邦子、焼肉を焼く久住昌之、豚肉ラブの角田光代……。スキヤキ、ステーキ、とんかつ、焼とり、ローストビーフ、ビーフシチュー、羊、鴨。ああ、どれもおいしそう。思いは乱れ、涎がわいてくる。食べものの力ってすごい(すごいのは筆のほう!)。
共感はもちろん、違いもまたよし。肉を前に時代も年代も超えて先生方とテーブルを共にしているような共犯性が生まれてくる。
食べることは生きるためだけではなく、思い出をなぞり、思い出をつくることだと思う。
毎回ひとつの食べものを選んでテーマにした「おいしい文藝」シリーズは、ご自身の食体験を思いながら読んでほしい。名随筆を噛みしめる→お腹がすく→何か食べる→「食」の思い出が増えてゆく……。読書と食べものの幸福なループが続く。
(日販発行:月刊「新刊展望」2014年4月号より)
今月の作品
- ぷくぷく、お肉
- 向田邦子、村上春樹、山田太一ほか
- すき焼き、ステーキ、焼き肉、とんかつ、焼き鳥、マンモス…。古今の作家たちが「肉」について筆をふるう随筆アンソロジー。読めば必ず満腹感が味わえる、「おいしい文藝シリーズ」第1弾。