2014年 2月号
西原理恵子さん 『よりぬき毎日かあさん』
多数の週刊誌連載を抱える人気マンガ家・西原理恵子さん。その仕事ぶりは締め切りに追われる「自転車操業」なだけに、『よりぬき毎日かあさん』は「担当編集者の真の合格が出たものが、1冊になっている感じ」と笑う。
「毎日新聞」での週1連載が12年目に突入した、累計210万部を超える大人気シリーズ『毎日かあさん』。二人の子どもと、元夫で戦場カメラマンの故・鴨志田穣さんとの日常を中心に、笑いあり、涙ありの家族の情景をしみじみと描く。
初の傑作選である本作には、息子が小学校を卒業する7巻までの中から選りすぐった70作品と、特別企画として、著者本人や、作品のモデルである息子&娘へのインタビューが収録されている。
子どもたちへのインタビューは、西原さんの不在時に自宅で行われたもの。「インタビューをした担当編集者が、作り一切なしで書いたと言っていましたから、うちの子たち、わりとおもしろいことを言っているなとうれしかったですね」
「子どもの頃、家庭がもめていて日々怒られて育ったので、そういう子育てはしたくなかった。おかげで親子喧嘩をしたこともないし、子どももおっとりしています。勉強も片付けもまるでできないけれど、健康でニコニコ笑って、友だちも多いから、それでいいの」
その在り方の根底には、「別にええやんかと許す、西ならではの情の文化」がある。「東京は、国を動かさなくてはいけない人たちが集まるから、より厳格な、筋の文化。子育て観も、母親はこうあるべきと厳しく縛られているのでは」。であればこそ、作品に流れる「西の文化のゆるさ」が、東の、特に男の子を持つ母親たちを解放したことは、確かな手応えとなって著者にも届いている。
西原さんは、2007年、元夫の鴨志田穣さんを腎臓ガンで亡くしている。「夫の余命宣告のときにわかったのは、残り時間を逆算
しないともったいないということ。息子はいま十五歳なので、あと三年もしたら、家を出てしまうかもしれない。娘も彼氏ができたら私のことなんてどうでもよくなるだろうから、あと少ししかこんなにおしゃべりできない。そんなときに、昨日のテストの話で怒ったってつまらないでしょう。みんなでおいしいご飯を食べて、寝ちゃえばそれでいいかなと思うようになりました」
『毎日かあさん』は、テレビアニメ化、実写映画化もされ、本作によって、女性ファンが一気に増えたという西原さん。特に、高齢層にはマンガというだけで敬遠されることも多いので、子育てが終わった年配女性たちからの「まさにこうだったとなつかしく思い出しています」という声がうれしいと語る。
「早送りですが、見せ場百連発」の、「家族の7年間がつまった」本作。ファンはもちろん、『毎日かあさん』未読の方にも、ぜひその魅力を味わってほしい。
(日販発行:月刊「新刊展望」2014年2月号より)
今月の作品
- よりぬき毎日かあさん
- シリーズ累計210万部突破の人気漫画初の「傑作選」。単行本1〜7巻から選りすぐったベスト70作品を収録。息子&娘へのインタビュー、没ネーム公開、西原理恵子の育児相談など、特別企画も満載。