2013年 9月号
真梨幸子Yukiko Mari
“イヤミスの女王”として人気を博す真梨幸子さんの書斎は、都心のタワーマンション。ペーパーレスを徹底追求した美的空間である。「片付けられないので、初めから物を置かないようにしているんです」。ファックス、プリンターは持たず、「紙を一切使わない」執筆生活。編集者とのやり取りは、原稿から数百枚に及ぶ校正刷りまですべて、紙に出力することなくデータで行う。「こういう生活を始めてから、物をあまり買わなくなりました」
小説は、プロットを立てずに「ゴール地点が見えないまま」書き始める。「登場人物がひとり歩きして、語りかけてきて……。書いている間は夢遊病みたいな状態かも(笑)」。さまざまな要素をコラージュしながら物語を紡いでいくことも多い。
今夏話題のミステリー『鸚鵡楼の惨劇』で は、「洋館」「鸚鵡」「花街」「80年代」「バブル」「スピリチュアリズム」等をコラージュした。物語は読むほどにおぞましいのに、ページをめくる手は衝撃のラストまでノンストップ。恐るべき吸引力、真梨作品の真骨頂なり。
瀟洒な棚に本が少し。これは執筆中の作品の資料。それ以外は収納室に。執筆スタイルは、デジタルメモ「ポメラ」(写真手前の黒い機器)で「いつでもどこでも」。ノートパソコンは原稿の仕上げやインターネット検索で使う。「ポメラちゃんはワープロ専用機のような使い勝手。コンパクト&シンプルでストレスフリーです。集中できるし。パソコンではメールやツイッターに寄り道して結局進まないんです」。常時携帯するポメラにアイデアもメモする。「血まみれ、隣、寝室、みたいな単語だけでも(笑)」
(日販発行:月刊「新刊展望」2013年9月号より)
今月の作品
- 鸚鵡楼の惨劇
- 1991年、バブル期の西新宿。人気エッセイストの蜂塚沙保里は、名声と、超高級マンションでのセレブライフを手に入れた。でも…。大ベストセラー「殺人鬼フジコの衝動」を超える戦慄のミステリー。