【特集】 日本経済を小説で学ぶ
[インタビュー] 幸田真音さん │ 三橋貴明著『コレキヨの恋文』
このところやっと、景気回復の兆しを感じている国民が多いのでは。しかし、少し前まで円高デフレ不況が長引き、「人口減少の日本はもう二度と経済成長できない。国債は暴落し日本は破綻する」と経済評論家がTVで毎日語っていた。そんな混迷の日本と驚くほど似た時代があった。
「リーマンショック・ユーロ危機、デフレ円高不況、東日本大震災」の現在に対し、その時代は「ウォール街株式大暴落、昭和大恐慌、関東大震災」。そう、平成の日本は昭和初期の日本と酷似している。ついでに政治の混迷も同様で、両時代とも首相がコロコロ替わった。
そんな昭和初期に7度の大蔵大臣、首相として日本を世界恐慌からいち早く脱出させたのが「稀代の財政家」と言われる高橋是清である。
不況が続く201X年、大混乱を経て日本で最初の女性宰相が誕生したところからこの小説は始まる。官邸での就任パーティ。増税・緊縮財政路線の財務省と成長政策で日本復活を図るべきとする補佐官との板挟みに疲れた霧島さくら子首相は官邸の庭に出る。と、桜の下の椅子で髭を蓄えた和装の老人と出会う。二人はお互いを知らぬまま昨今の政治・経済状況を語り合うのだが、妙に平仄が合う。さくら子は老人の確信に満ちた話に感銘を受け、それをヒントに、財務省の筋書きとは違う成長政策を打ち出す。
さくら子は、官邸の庭での幾度かの邂逅でその老人から学んだ経済政策を次々と大胆に進めた。すると景気は上向いてきたではないか。しかし……もしかしたら、信じがたいことだが、その老人は高橋是清翁ではないか、と思い始める。ということは……2月26日に老人は大変な不幸にまきこまれてしまうではないか! どうする、さくら子!
この本は笑って泣いて、日本と世界の経済の仕組みがストンとわかる傑作経済小説だ。著者は今をときめく経済アナリスト。アベノミクスは、まさにこの本で高橋是清が語ったとおりに進んでいる。ちなみに「恋文」とは、当時、高橋是清が実際に国民に向けて発表した文章なのである。
きっと涙が溢れ出ることだろう。
(日販発行:月刊「新刊展望」2013年7 月号より)
[インタビュー] 幸田真音さん │ 三橋貴明著『コレキヨの恋文』
Web新刊展望は、情報誌「新刊展望」の一部を掲載したものです。続きは「新刊展望」2013年7月号で!
- 新刊展望 7月号
- 【主な内容】
[まえがき あとがき] 仁木英之 隠れる、ということ
[特集] 日本経済を小説で学ぶ 幸田真音/堺 憲一