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特集・対談

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巨鯨の海
伊東潤
和を乱せば、死。獲物を侮れば、死。時は江戸。究極の職業集団「鯨組」が辿る狂おしき運命とは。江戸から明治へ、共同体で繰り広げられる劇的な人生を描いた渾身作。
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国を蹴った男
伊東潤
武田信玄、上杉謙信、織田信長、豊臣秀吉―天下に手を伸ばした英雄たちの下、男たちはそれぞれの正念場を迎える。凛然たる戦国小説集。第34回吉川英治文学新人賞受賞作。
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時限の幻
吉川永青
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伊東潤
朝鮮出兵最前線、肥前名護屋の陣には落魄の身となった二人の男がいた。信長の息子・信雄と、北条家の生き残り氏規。苛烈な時代を彼らはいかに生き抜こうとしたのか。
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戯史三國志我が糸は誰を操る
吉川永青
曹操に友と呼ばれながら、狂気の将・呂布に寝返った軍師・陳宮の熱き思い。21世紀の新・三國志。第2弾『我が槍は覇道の翼』は呉の程普、第3弾『我が土は何を育む』は蜀の寥化が主人公。
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城を噛ませた男
伊東潤
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君に大望はあるか。「江東の虎」孫堅が問う。とるべきは野心の槍か、義の翼か。呉の「いぶし銀」程普の怒りが、悩みが、悦びが、誰も読んだことのない三國志の扉を開ける…。21世紀の新・三國志、堂々の第2弾。
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2013年 6月号

【対談】 伊東 潤×吉川永青 歴史小説を書いていくこと

職業作家として歴史小説に向かう思いと覚悟。

伊東潤 Jun Ito
1960年横浜市生まれ。早稲田大学卒。外資系企業に長らく勤務後、文筆業に転じ、歴史小説や歴史に材を取った作品を相次いで発表。『国を蹴った男』で第34回吉川英治文学新人賞受賞。『黒南風の海 加藤清正「文禄・慶長の役」異聞』で「本屋が選ぶ時代小説大賞2011」受賞。『城を噛ませた男』と『国を蹴った男』で二度の直木賞候補となる。『武田家滅亡』『戦国鬼譚 惨』『義烈千秋 天狗党西へ』『叛鬼』ほか著書多数。最新刊は『巨鯨の海』。

吉川永青 Nagaharu Yoshikawa
1968年東京都生まれ。横浜国立大学経営学部卒業後、会社勤務のかたわら執筆を始め、2010年「我が糸は誰を操る」で第5回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞。同作は11年『戯史三國志 我が糸は誰を操る』として刊行。三國志ファンのみならず幅広い読者の評価を得る。他著書に、シリーズ第2弾『戯史三國志 我が槍は覇道の翼』、同第3弾『戯史三國志 我が土は何を育む』、『時限の幻』がある。

歴史解釈とストーリー

吉川 『巨鯨の海』を読ませていただきました。まず第一話「旅刃刺(たびはざし)の仁吉(にきち)」を読み終わった時点で考えたのが、鯨取りというのは職能集団ではなく戦闘集団なんだと。仕事はすべて戦いですが、その中でも特に肉体を駆使した本当の意味での闘いが、鯨取りの仕事には色濃くて。捕鯨シーンはすごく迫力がありました。
伊東 ありがとうございます。作家は自らの強みを見極めることが、とても大事だと思います。僕の場合は、合戦などの躍動感だと思っています。しかし、合戦だけ書いていては読者に飽きられてしまう。他に何か躍動感ある題材はないかと思いました。海の描写も強みの一つだと思っていたので、双方が合致する世界が古式捕鯨の物語だったわけです。さらに、僕の大好きな小説に津本陽さんの『深重(じんじゅう)の海』があります。先行作へのオマージュというか、換骨奪胎して自分の物語として、『深重の海』の世界観を次の世代に伝えていきたいという思いもありました。
吉川 海の話はいいですよね。僕も以前、古代の大航海の話を書きました。小説現代長編新人賞に応募して落選したものですが。この先もっと勉強して力をつけたら、リライトしていきたいと思っています。
伊東 古代というと?
吉川 邪馬台国の頃です。「魏志倭人伝」に邪馬台国への行き方が書かれていますが、女王国の先に黒歯国(くろはこく)があったりして、その場所を辿っていくと現在のサイパン辺り行き着く。ところが黒潮に乗り、アリューシャン海流に乗ってアメリカ大陸をぐるっと回っても一年くらいで行けるという仮説があって、それはおもしろそうだなと。しかし『巨鯨の海』を拝読して、まだまだ僕は勉強が必要だと痛感しました。黒潮は怖いですね。そういうところをもっと勉強しないと、古代の大航海の話を書いても嘘になってしまう。伊東さんは本当に細かいところまでよく調べて書かれていますよね。鯨取りの手順から何から。
伊東 でも書いたのは最低限必要な情報だけです。調べたことを書くだけでは小説にならない。僕は歴史ものを書くにあたって、歴史解釈とストーリーテリングを両立させてきたつもりです。「歴史解釈エンジン」「ストーリーテリングエンジン」と呼んでいますが、その二つを回して今まで作品を書いてきました。今回の作品は、ストーリーテリングエンジンをより使って書いた気がします。
吉川 伊東さんのおっしゃる二つのエンジンのどちらに偏りすぎてもいけないというところはあると思います。史実があっても、ごくごく細かいところの史実とされていることを曲げてストーリーに寄り添わせていかないと、新しいものは紡いでいけないじゃないですか。
伊東 僕は基本的に史実を改変することをやりません。最近の歴史小説の中には、安易に史実を変えたり、史料をよく調べていなかったり、架空の人物を使ってご都合主義の物語を作ったりするものがあって、首をひねることが多くなりました。その点、吉川さんや澤田瞳子さんら新進の本格系歴史小説家の作品は、安心して読み進められます。
吉川 調べた上で、話を回していくためにスポイルしなければいけない細部は結構ある。その結果として、曲げなければいけないところが出てきたときだけに限るように僕はしていますが。ただ、一つ曲げたことで物語が大きく広がることもありますし。
伊東 難しいですね。微細な部分で少し曲げるのは、さじ加減が難しい。曲げたら曲げたで着地点をどうするかが問題です。小さなものでも、いったん曲げてしまうと、後になって大きな矛盾が生じてくることもあります。そんな時、歴史小説の難しさを感じると同時に、歴史というものに対して、常に畏敬の念を持って接していかねばならないと思います。
吉川 何かを曲げたとしても本来の流れに戻さなくてはいけない。そこでどう論理性を構築していくかということでしょうね。

先人に学ぶ

吉川 『巨鯨の海』は、冒頭20ページくらいは入り込むのに結構苦労するところが実はあったんです。方言や鯨取りの基礎知識みたいなものが頭に入ってくるまでは。でもその後はノンストップで読みました。
伊東 「道具出し」と呼んでいますが、最初に最低限の知識を開陳しなければならない。そこで、いかにリーダビリティを上げていくかが勝負ですね。そういう意味では最初の一編に苦労しました。かなり工夫しましたし、文章の推敲もそこに最も力を入れました。
吉川 導入としてすんなり入っていける物語ですよね。
伊東 今回は、そこのところを入念に練ったので、最初の「道具出し」さえクリアすれば、大半の読者は、違和感なく物語世界に溶け込めると思います。
吉川 歴史ものはみんなそうですよね。伊東さんが以前おっしゃっていましたが、読者の知識ゼロを基準に書かなければいけないと。
伊東 しかしそれをすると、説明ばっかりだと言う人もいる。
吉川 しかし説明がないと、置いてきぼりになる人があまりにも多い。それを説明ではなく物語に必要なものとして出しつつ、読者の頭の中に植え付けていくのは結構大変ですよね。
伊東 工夫が必要ですね。今回も情報の持っていき方には難しさを感じました。
吉川 物語の構成で一番すごいと思ったのは第五話「訣別の時」です。文学性も非常に高くて。大人になるというのは、何かを捨てること。そんなテーマが感じられました。また、鯨取りの社会は武士社会と同じように閉鎖的であり、閉鎖的でなければ生まれてこない異常性がある。そんな歪んだ世界の中で純粋であり続けることの難しさ、自分の置かれた状況や世の中を受け容れていく過程で大人になることを、壮絶に描かれていると思いました。
伊東 この作品は、閉鎖された共同体と人というものをテーマにしています。これだけ情報化社会になると、そんなものはすでにないとお思いかもしれませんが、実はそんなことはなくて、企業にいると自然におかしな価値観に染まり、いつしかその企業の価値観が常識だと勘違いするようになります。それだけ現代の日本企業は閉じられており、企業文化という魔物に支配されています。

(2013.4.15)

(日販発行:月刊「新刊展望」2013年6月号より)

対談はまだまだ続きます。続きは「新刊展望」2013年6月号で!

Web新刊展望は、情報誌「新刊展望」の一部を掲載したものです。
全てを読みたい方は「新刊展望 6月号」でお楽しみください!

新刊展望 6月号
【今月の主な内容】
[まえがき あとがき] 領家子 ボーイミーツガール
[対談] 歴史小説を書いていくこと 伊東 潤・吉川永青
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伊東 潤さんにとっての「トクベツな3冊」

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