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特集・対談

著者関連商品

幸せの条件
日本の未来を救う。コメから採れる新燃料を求め、農業知識ゼロの24歳女子が単身農村へ。果たして新エネルギーは獲得できるのか…。農業、震災、そしてエネルギー問題に挑む、感動の物語。
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主よ、永遠の休息を
通信社社会部記者が、未解決猟奇事件の「犯行現場と思しき実録映像」に関わる事案に巻き込まれた。静かな狂気に呑み込まれていく若き事件記者の彷徨、そして驚愕の結末は。人気作家の新境地、傑作長編推理。
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ハング
警視庁捜査一課の堀田班は、宝飾店オーナー殺人事件の容疑者を自供により逮捕。だが公判では自白強要があったと証言され、翌日、班の刑事の一人が首を吊った姿で見つかる。
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インビジブルレイン
姫川班が捜査に加わったチンピラ惨殺事件。暴力団同士の抗争も視野に入れて捜査が進む中、「犯人は柳井健斗」というタレ込みが入る。ところが、上層部から奇妙な指示が下った―。
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あなたが愛した記憶
拉致監禁。両手親指切断。暴行、そして扼殺。あまりに残虐な殺人事件が世間を賑わせていた時、ひとりの女子高生が俺の前に現れた。「私、たぶん犯人を知ってる」…。ノンストップ恋愛ホラーサスペンス。
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2012年 11月号

【読書週間インタビュー特集】 この作家と、本の話

「著者とその本」コーナーを拡大して、新刊インタビューを3本お届けします。いずれも、読書のよろこびを改めて感じさせてくれる本ばかり。そこに込められた著者の想いをお聞きください。

桜庭一樹『本のおかわりもう一冊 桜庭一樹読書日記』 │ 誉田哲也『幸せの条件』 │ 道尾秀介『ノエル a story of stories』

誉田哲也 Tetsuya Honda
1969年東京都生まれ。学習院大学卒。2002年「妖の華」で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞、03年「アクセス」で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞。著書に、映画化も決定している『ストロベリーナイト』などの〈姫川玲子〉シリーズ〈ジウ〉シリーズ、『武士道シックスティーン』などの〈武士道〉シリーズ、『国境事変』『ヒトリシズカ』『歌舞伎町セブン』『レイジ』『ドルチェ』『あなたの本』『あなたが愛した記憶』ほか多数。

誉田哲也『幸せの条件』

ジウ』『ストロベリーナイト』などの警察小説、『武士道シックスティーン』などの青春小説で人気を博す誉田哲也さんが、最新作『幸せの条件』でテーマに選んだのは、「農業」「エネルギー問題」そして「震災」である。その発端には、一冊の本があった。石川英輔さんの『大江戸神仙伝』。タイムトラベルもののSF小説である。現代人の目を通して江戸の町を描いたこの物語は、昔の人々が再生可能エネルギーによる社会生活を実現していたことを教えてくれたのだという。

「読んだのは90年代後半。こういう姿はもはや取り戻せないし、これからも日本はずっと海外にエネルギーを依存しなければいけないんだと当時は思っていました。でも2000年代に新エネルギーとしてバイオエタノールが出てきたとき、これを題材にした開発物語が書けたらと。ところが、バイオエタノールって知れば知るほどコストが見合わないんです。いくらフィクションだからと言って、サクセスストーリーにしてしまうのはちょっと……」

一方で、「農業を書きたい」との思いも以前から誉田さんの中にはあった。

「若い人など特に、農業は大変そうだと敬遠するけど、僕は農業のイメージをポジティブにとらえて、明るく前向きに書けたらと思っていました」

そうして、農業とバイオエタノールが結びつく。

「アメリカでバイオエタノールの原料はトウモロコシ、ブラジルはサトウキビ。じゃあ日本ならやっぱり〈おコメでバイオエタノール〉の小説を書きたいと。田んぼの風景も魅力的ですしね。ただ、その時点では漠然としたイメージしかなくて、コンセプトは『誉田版 北の国から』(笑)。その先はどうしたものかなと思いつつ、昨年2月頃から長野に取材に行き始めました」

やがて、3月11日。東日本大震災が起こった。

「原発事故があったことで、エネルギーはもはやコストの問題だけでは語れなくなった。もちろん、バイオエタノールが原子力に代わるくらいの発電エネルギーになるまでには相当の努力が必要でしょう。でも一方で、原発のように大きな、ある種悪魔的なエネルギーに頼らないと決めたら、他の何か大きなものに頼るより分散していったほうがいいだろうとの考えも湧いてきて。それで、震災を盛り込み、コストだけを追うのではない物語にしていこうと決めたんです。それまでの〈できれば農業を書きたい、バイオエタノールを書きたい〉という気持ちは、震災によって、〈今書かなければ〉という強い思いに変わりました」

主人公は瀬野梢恵、24歳。東京・荒川区の実験用ガラス器機メーカー勤務。仕事は伝票整理だ。ある日突然、社長から「バイオエタノール用のコメを作れる農家を探してこい!」と長野県穂高村に長期出張を命じられる。けれど営業活動は門前払いの連続。農業に対して興味も知識もなかった梢恵は、現地の農業法人「あぐもぐ」で修業をする羽目になり、冬の雪掻きから秋の稲刈りまで、米作り・野菜作りの様々な過程を、初めて経験していく。

「僕自身が取材で知ったことや驚きなどはそのまま、梢恵に表現してもらいました」

読者もまた、それを追体験しながらたくさんの知識を得ていくことになる。トラクター、田植え機、コンバインなどの農業用機械のしくみや、個人農家ではない「農業法人」のあり方なども実に興味深かったりする。

「梢恵と一緒に多くの読者の方が、農業の印象を少しでも変えてくれるのであればうれしいです。農業って、ほかのものづくりの仕事とは何か違うものに見えてしまうんですよね。農協、土地、制度などの要素もあるから、たとえば、『貸店舗を見つけたからラーメン屋を開こう』みたいなわけにはいかない(笑)。でも制度も少しずつ変わり、新規参入する方も出てきている。農業を特別なものとしてとらえるのではなく、ほかのビジネスと同列の選択肢の一つとして考える人が、今後増えていくといいなと思います」

エンターテインメント性の高さは、さすが誉田作品。そして読者にとっては、新たに出会う誉田さんの一面だ。

「とは言え、僕はもともと何を書いてもいいと思っているんです。僕の書けるであろう世界観が360度あるとすれば、僕は中心にいて、そこからボールを投げている。警察小説の方面や、青春小説の方向、デビュー当初はホラーのほうに。読者の方に今見えるのは、その三方向を結んだ三角形だけど、たまたま早い段階で僕はそちらにボールを投げただけ。今回『幸せの条件』が加わって三角形が四角形になったように見えるとしても、僕はずっと円を意識している。そういう意味では、今回の作品が特別ではないです。ただ、僕の中で前例がなかったのは、現実の事件を書いた点。今までの作品では、西暦など一切書かなかった。数年後に文庫化されたときに情報が古くなるので、意識して明言しなかったんです。でも東日本大震災のショックは、ほかのものに置き換えられない。だから完全に取り込んで書くことにしました」

梢恵という若い女の子の成長物語としても感動の一編である。

「梢恵は、彼氏とも学生感覚の延長でつき合っているし、就職もそう。〈会社員〉にはなったけれど、本当の意味での〈社会人〉、社会に貢献できる人間にはなれていなかった。そこに行きつくまでの物語でもあります。この作品には、テーマもメッセージもいろいろなものを込めました。お好きな角度から読んでいただければと思います。もちろん、これを読んで農業をやってみようかと少しでも思っていただけたら、一番うれしいですけどね」
(2012.9.14)

(日販発行:月刊「新刊展望」2012年11月号より)

桜庭一樹『本のおかわりもう一冊 桜庭一樹読書日記』 │ 誉田哲也『幸せの条件』 │ 道尾秀介『ノエル a story of stories』

Web新刊展望は、情報誌「新刊展望」の一部を掲載したものです。続きは「新刊展望」2012年11月号で!

新刊展望 11月号
【主な内容】
[懐想] 森 まゆみ 千駄木の漱石
[インタビュー特集] この作家と、本の話 桜庭一樹・誉田哲也・道尾秀介
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