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価格:1,760円(本体1,600円+税)
【2020年07月発売】
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【2020年07月発売】
[BOOKデータベースより]
本書は、ドイツ連邦文書館に収蔵されている一次史料から、植民地統治において医学が果たした役割と、第一次世界大戦後のいわゆる「ヴェルサイユ修正主義」との関係を論じる。いまだ眠り病が撲滅されていないという状況を鑑みるとき、そこで描かれる「植民地の過去」は、この問題が単にドイツ史における逸話としては片づけられない広がりをもつことを示している。
序章 植民地支配における「幸福な原住民」
[日販商品データベースより]第1章 ドイツの眠り病対策―植民地版「特有の道」?
第2章 東アフリカにおける薬剤治療―「隔離政策」という幻想
第3章 ツェツェバエ対策―「代償行為」としての除草作業
第4章 トーゴの眠り病対策―現地住民・「首長」・イギリスという「関係性」
第5章 トーゴにおける収容所―「正面突破」の薬剤治療
第6章 カメルーンという「辺境」―多難な船出
第7章 カメルーンと眠り病―「見切り発車」のツケ
第8章 戦間期ドイツの眠り病研究―特効薬「ゲルマーニン」をめぐって
終章 植民地の過去をめぐる「二重の忘却」
ドイツが植民地統治を本格化させた20世紀初頭、ある感染症がアフリカで猛威を振るった。一般に〈眠り病〉と恐れられたトリパノソーマ病である。ツェツェバエを媒介にしてヒトに広がるこの病気は、嗜眠性の髄膜炎を起こして感染者を確実に死に至らしめる。この時期、赤道アフリカではおよそ80万人が犠牲になったといわれる。
当時のドイツ医学は世界最高水準にあり、コッホやエールリヒが国際的に活躍するなか、眠り病の制圧も近いと思われた。だが、ことはそう簡単には進まず、植民地統治期、ドイツ医学は有効な対策を講じることができなかった。現地住民は感染リスクにさらされながらハエの駆除作業に動員され、危険な薬剤の実験台ともなって命を落とした。
第一次世界大戦後にドイツは眠り病の特効薬を開発するが、ヴェルサイユ条約によりかつての植民地は戦勝国の支配下にあった。はたして、この新薬をイギリスやフランスに提供するべきか。ドイツで植民地の再獲得を求める動きがみられるなかで、科学と政治はふたたび緊密に結びついてゆく。
本書は、ドイツ連邦文書館に収蔵されている一次史料から、植民地統治において医学が果たした役割と、第一次世界大戦後のいわゆる「ヴェルサイユ修正主義」との関係を論じる。いまだ眠り病が撲滅されていないという状況を鑑みるとき、そこで描かれる「植民地の過去」は、この問題が単にドイツ史における逸話としては片づけられない広がりをもつことを示している。