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江戸期〜明治十九年
国書刊行会 川戸道昭
点
江戸期(一八二六〜一八六八)明治二年(一八六九)明治三年(一八七〇)明治四年(一八七一)明治五年(一八七二)明治六年(一八七三)明治七年(一八七四)明治八年(一八七五)明治九年(一八七六)明治十年(一八七七)〔ほか〕
日本近代精神の形成に決定的な役割を果たした幕末明治の翻訳書。なかでも広い読者を獲得した文学・伝記・外国語リーダーをオールカラーで総観する、著者四十年余に及ぶ収集・研究の集大成。刊行にあたって 川戸道昭(中央大学名誉教授) 幕末・明治の翻訳書が日本の近代化を推し進める上で果たした役割には、われわれ現代人の想像を超えるものがある。なかでも幅広い読者を獲得した文学、伝記、外国語リーダーの翻訳は、西洋に範を置く新たな文化や制度の構築に多大なる貢献をした。 その一端を紹介すると、外国語リーダーの翻訳を基にわが国初の『国語読本』が編纂される(明治六年)。あるいは、海軍兵学寮において明治天皇の御前でネルソン提督の伝記が講じられ、日本海軍の強化に向けた基礎づくりが開始される(同八年)。さらには、西洋の詩の翻訳を基にした「新体」の詩が発表される(同十五年)等々、例をあげれば枚挙にいとまがない。 当時の翻訳書が日本の近代化に欠かせない重要な役割を担っていたことは、たとえば、上条信次の『開化進歩 後世夢物語』(明治七年)という作品を見てもわかる。これは、主人公が二百年後の文明世界を旅するという一種のファンタジー小説であるが、その終盤近くに「一般ノ投票」「婦人ノ権」という章が出てくる。そこには一定の税金を納めた者に選挙権が与えられるという、これが書かれた当時のイギリスの状況をはるかに飛び超えて、「男女斉シク投票ノ権ヲ許」される未来の状況が述べられている。ひるがえって、これが出された当時の日本はどうであったかというと、ようやく板垣退助らによる「民撰議院」設立の要望書が出されるという状況にあった。これを読んだ人々はさぞ驚いたに違いない。その驚きはやがて覚醒へとつながっていく。日本においても是非イギリス式国民投票を実現する必要がある、民撰議院を実現する必要がある。つまりこの翻訳小説は、自由民権運動の夜明けを告げる記念碑的な作品であったということになる。 このような重要な役割を担った書物でありながら、今日それらの翻訳書を一望できる基本資料がない。われわれは、国会図書館へ行けばすべて見られるだろうと思いがちだが、同館の蔵書は百年にわたって閲覧に供されてきたため表紙や頁の一部を欠いた欠損本が少なくない。江戸期や明治初期のものには本自体見当たらないものもある。こうした欠を補うべく、編者は四十年にわたって基本資料の調査・収集に努めてきた。今回その集大成として編纂したのが本事典である。収録書は合計一〇〇〇編(冊数にすると一三〇〇冊余)、木版、石版、銅版の挿絵もふんだんに掲載し、目で楽しめる事典とした。これを機に、日本の近代化に大きく貢献したこれらの文化遺産ともいうべき翻訳書に、一人でも多くの方々に関心を寄せていただければ、編者としてこれ以上の喜びはない。
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1位
又吉直樹
価格:1,320円(本体1,200円+税)
【2015年03月発売】
一覧を見る
[BOOKデータベースより]
江戸期(一八二六〜一八六八)
[日販商品データベースより]明治二年(一八六九)
明治三年(一八七〇)
明治四年(一八七一)
明治五年(一八七二)
明治六年(一八七三)
明治七年(一八七四)
明治八年(一八七五)
明治九年(一八七六)
明治十年(一八七七)〔ほか〕
日本近代精神の形成に決定的な役割を果たした幕末明治の翻訳書。なかでも広い読者を獲得した文学・伝記・外国語リーダーをオールカラーで総観する、著者四十年余に及ぶ収集・研究の集大成。
刊行にあたって 川戸道昭(中央大学名誉教授)
幕末・明治の翻訳書が日本の近代化を推し進める上で果たした役割には、われわれ現代人の想像を超えるものがある。なかでも幅広い読者を獲得した文学、伝記、外国語リーダーの翻訳は、西洋に範を置く新たな文化や制度の構築に多大なる貢献をした。
その一端を紹介すると、外国語リーダーの翻訳を基にわが国初の『国語読本』が編纂される(明治六年)。あるいは、海軍兵学寮において明治天皇の御前でネルソン提督の伝記が講じられ、日本海軍の強化に向けた基礎づくりが開始される(同八年)。さらには、西洋の詩の翻訳を基にした「新体」の詩が発表される(同十五年)等々、例をあげれば枚挙にいとまがない。
当時の翻訳書が日本の近代化に欠かせない重要な役割を担っていたことは、たとえば、上条信次の『開化進歩 後世夢物語』(明治七年)という作品を見てもわかる。これは、主人公が二百年後の文明世界を旅するという一種のファンタジー小説であるが、その終盤近くに「一般ノ投票」「婦人ノ権」という章が出てくる。そこには一定の税金を納めた者に選挙権が与えられるという、これが書かれた当時のイギリスの状況をはるかに飛び超えて、「男女斉シク投票ノ権ヲ許」される未来の状況が述べられている。ひるがえって、これが出された当時の日本はどうであったかというと、ようやく板垣退助らによる「民撰議院」設立の要望書が出されるという状況にあった。これを読んだ人々はさぞ驚いたに違いない。その驚きはやがて覚醒へとつながっていく。日本においても是非イギリス式国民投票を実現する必要がある、民撰議院を実現する必要がある。つまりこの翻訳小説は、自由民権運動の夜明けを告げる記念碑的な作品であったということになる。
このような重要な役割を担った書物でありながら、今日それらの翻訳書を一望できる基本資料がない。われわれは、国会図書館へ行けばすべて見られるだろうと思いがちだが、同館の蔵書は百年にわたって閲覧に供されてきたため表紙や頁の一部を欠いた欠損本が少なくない。江戸期や明治初期のものには本自体見当たらないものもある。こうした欠を補うべく、編者は四十年にわたって基本資料の調査・収集に努めてきた。今回その集大成として編纂したのが本事典である。収録書は合計一〇〇〇編(冊数にすると一三〇〇冊余)、木版、石版、銅版の挿絵もふんだんに掲載し、目で楽しめる事典とした。これを機に、日本の近代化に大きく貢献したこれらの文化遺産ともいうべき翻訳書に、一人でも多くの方々に関心を寄せていただければ、編者としてこれ以上の喜びはない。