[BOOKデータベースより]
「このままじゃおれたちはやばい、ラストに相当やばい場面が待っているかもしれない。おれたちというのは、床屋のまえだとおれ、それにもちろん津田さんの三人組のことだ。だけど厳密にやばいのはあんただよ。わからないか。夜汽車に乗って旅立つ時だよ」いきなり退職金を手渡された津田伸一にいよいよ決断の機会が訪れる―忽然と姿を消した家族、郵便局員の失踪、裏社会の蠢き、疑惑つきの大金…たった一日の交錯が多くのひとの人生を思わぬ方向へと導いてゆく。
[日販商品データベースより]一家3人の神隠し事件、郵便局員の失踪…。多くの人々の人生を左右する2月28日の交錯が、1日の物語となって雪の夜に浮かびあがる。〈受賞情報〉山田風太郎賞(第6回)
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人々の交錯が一日の物語となり浮かび上がる
もうしばらくだ。もうしばらく待てば、偽札事件は終息する。一家三人の神隠し事件はともかく、みずから関わった騒ぎのほうは警察も裏社会の“あのひと”こと倉田健次郎も追跡を断念するだろう。追手の心配がうすれ、そう考えた津田伸一はノートに鉛筆で「二年前、夏」と文章を書き出し、しばらく平穏に過ごしていた。
ところが翌月に入って、ハンバーガーショップに姿を見せた女優倶楽部の社長からいきなり退職金を手渡され、最後通告を受ける。
「このままじゃおれたちはやばい、ラストに相当やばい場面が待っているかもしれない。おれたちというのは、床屋のまえだとおれ、それにもちろん津田さんの三人組のことだ。だけど厳密にやばいのはあんただよ。わからないか。夜汽車に乗って旅立つ時だよ」
あのひと倉田健次郎が散髪に現れたのか? 房州老人のあの大金は裏社会から流れてきたものなのか? 数日のあいだ身を潜め、せっせと小説の下書きをつづける津田伸一にまもなく決断の時期が訪れる。
忽然と姿を消した夫婦と娘、郵便局員の失踪、疑惑つきの大金、そして「鳩」の行方……多くのひとの人生を大きく左右する二月二十八日の交錯が、たった一日の物語となって雪の夜に浮かびあがる。
【編集担当からのおすすめ情報】
本作品は文芸誌「きらら」に足かけ4年にわたり連載されました。その期間毎月、次回はどんな内容がどんなふうに描かれるのだろうか、と待ちきれなくてうずうずしていた編集者にとっては、こうして上巻から下巻までいっぺんに読める「あなた」が正直なところうらやましいです。下巻では急展開も待ち構えています。ぜひ最後の1行まで、これぞ小説、と言えるおもしろさをご堪能ください。